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渇いた心に水を注ぐ
第6章 ちょっとした誤解〜真由子
「2液の調合だけ、しておこうか?」と言うけど、
私はまだクラクラしているようだった。


「じゃあ、適当に色を調合してみるから、見てて?」
と言って、いくつかの色素を少しずつ混ぜていく。

「ドンピシャの色は難しいって、妻が言ってたから、
薄いのとか少し濃いのとか、
4つとも違う色で作ってみたらどうかな?」と言って、
調合していく。


「気に入らなかったら、明日、また調整するってことで。
1液はほぼアルコールで、
多分真由子先生、触れないから、
入れ替えやっておきますよ」と言ってくれるので、
ひたすら頭を下げた。


「遅くまでありがとうございました」と言うと、
「送りますよ?
そんなフラフラじゃ、
歩けないでしょう」と言われて、
有り難く送って頂くことにした。


時計を見るともう9時半を回っていた。

自宅前まで送って貰って、
「あ、これ、奥様に…」と、
お菓子の袋を渡して車から降りたけど、
まだフラフラしていた。


慌てて車から降りた高木先生が支えてくれたけど、
「あの…、大丈夫ですから。
ありがとうございました」と言って、
壁に掴まりながら何とか室内に入った。


水を飲んでソファに座った。

すると携帯が鳴った。
圭人さんからだった。


「もしもし?」とすぐに出たけど、
声が聴こえない。


「もしもし、圭人さん?
声、聴こえますか?
私の方、圭人さんの声、聴こえませんけど…。
もしもし?
一度切って、掛け直してみますね?」

そう言って、電話を掛け直してしたら、
電波が届かない処にいるか、電源が入ってないという機械の音声が流れた。

ん?
電車とかなのかな?
そう思ってた。


今日は揮発したアルコールで体調悪くなったし、
1人でのお風呂はやっぱり怖いので、
身体を濡らしたタオルで拭くだけにして、
少し早めに休むことにした。


もう一度寝る前に圭人さんに電話してみたけど、
やっぱり繋がらない。

お仕事、長引いてるのかなと思って、
ショートメールで、
「先に休みますね。おやすみなさい」と打ってから、
横になった。


その頃、圭人さんが勘違いしたまま、
泥酔しちゃってることは、
その時は知らなかった。
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