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渇いた心に水を注ぐ
第11章 働き方改革〜圭人
梨香子はさっぱりとした顔で帰ろうとした。

真由子ちゃんが急に、
「圭人さん、
梨香子さんの髪、シャンプーしてカットしてあげて?
なんか、疲れた顔してて、
これじゃあ、新しいステップ、踏み出せない。
一番可愛い梨香子さんにしてあげて?」と言い出す。


えっ?
なに、それ?


と思ったけど、
真由子ちゃんの勢いに俺も梨香子も負けてしまった。


本当に何年か振りで梨香子の髪を洗う。
凄くストレスが掛かっているらしくて、
頭皮が頭蓋骨にこびりついて、カチカチだ。

シャンプーの後、丁寧に頭から肩甲骨までマッサージをしてから、
軽くタオルドライをしてドライヤーも軽く掛けてから、
シザーだけでカットしていく。
そして、きちんとブローする。


「ほら!
ピカピカになった!
髪も艶やかで綺麗!」と、
鏡越しに真由子ちゃんが笑うと、
梨香子は肩を震わせて泣いている。


「あのね、
梨香子さんと一緒になるヒト、
何処かに居ると思いますよ。
圭人さんじゃなかったけど。
だから、ピカピカにして、
過ごしてみてください。
梨香子さんはとても魅力的な女性ですよ。
お相手は、男性が女性かは判らないけど…」と、
ゆっくりした口調で真由子ちゃんが言うと、
小さい声で、「ありがとう」と梨香子が言った。


「私もね、
圭人さんのシャンプーに救われたの。
凄く優しくて癒されました。
シャンプーしに来るだけなら…
大歓迎ですよ?」と言うので、

「俺は嫌だな」と言うと、

「圭人さんてば、
本当に子供みたい!」と笑われてしまうと、
俺まで可笑しくなって笑ってしまった。


梨香子は、
「ありがとう。
頑張ってみる」と言って出て行った。



「あのさ。
本当にシャンプーしに来たらどうするの?
嫌じゃないの?」

「だって、すごく反省して、
傷ついてるのよ?」

「元妻と俺が会っても気にしないの?」

「だって、何もないでしょ?」

「そりゃあ…」

「シャンプーする圭人さんの手は、
魔法の手だから…
癒やしてあげてくださいね?」

「いや、シャンプー以外の時も、
魔法の手だからね?
ほら、帰って続きをしたいな?」と言うと、
真由子ちゃんは紅くなる。
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