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渇いた心に水を注ぐ
第11章 働き方改革〜圭人
グランマに、
「ありがとう。
真由子ちゃんのトコに帰るね?」と言うと、
アップルパイを持たせてくれた。


「良い香り!
ありがとうございます。
今度、レシピを教えてくださいね」と、
真由子ちゃんは物凄く喜んでいるのを見ながら、
俺は色々なことを考え始めていた。


仕事のこと。
真由子ちゃんのご両親への挨拶。
結婚を認めて貰えるか。


それで、叔父さんの携帯に久し振りに電話をしてみた。
事務所に居るってことだったので、
そのまま真由子ちゃんと一緒に出掛けることにした。



車の中で、
「急にどうしたんです?」と訊かれて、
「あのさ。
俺、転職しようと思って」と言った。


「えっ?」


「早朝から働いたり、
映画やドラマの仕事で何日も帰れないとか、
あまりにも不規則で、
真由子ちゃんの負担になるから。
もうちょっと規則正しい仕事するよ」


「でも…
今のお仕事、好きな仕事なんでしょう?」


「楽しいけど、
そこまで好きって訳じゃないよ。
なんなら俺、
真由子ちゃんのシャンプーだけしてあげれれば、
別に良いかなって思ってる。
それでさ、元々仕事させて貰ってた叔父さんの事務所にこれから行って、
もう一度雇ってくださいって頭下げることにした。
結婚したいからって、紹介しても良いかな?」と思い切って言ってみると、
真由子ちゃんは涙ぐみながら首を縦に振ってくれた。


久し振りの叔父さんの事務所は、
小ざっぱりした感じで落ち着く。


「久し振りだな。
ああ。事務員さんも辞めて貰って独りでやってるんだよ」と立ち上がるので、
「あの…お茶でしたら私が淹れますね?」と、
真由子ちゃんが立ち上がって下がってしまう。


「あのお嬢さんは?」


「結婚したいと思っていて…」と言うと、
嬉しそうな顔をする。


お茶を運んでくれた真由子ちゃんを待って、
叔父さんに改めて真由子ちゃんを紹介した。


「それで、今日はなんの用事かな?」と言いながら、
「おや、美味しいな。
同じ茶葉なのに。
淹れ方が上手なんですな」と笑う。
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