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時と運命の調律者
第31章 メリアリアside1
 “もしかしたなら蒼太はここで道に迷ってしまったのかも知れない”、“帰れなくなってしまったのかも知れない”と、そう思ったのである(事実はエルフの世界に行っていた訳で有るが)。

 そんな訳であったからだから、彼が無事に帰って来てからは一層、その行動を蒼太と共にするようになって行った、勿論、他の友達と遊んだ事もあるにはあったし、時には喧嘩をした事もあったけれども大抵は蒼太が先に謝って、メリアリアも直ぐに謝り返して仲直りして、そして二人はまた一緒の時を過ごす、それがお決まりのパターンとなっていったのだ。

 蒼太と一緒に居られる間は本当に楽しくて楽しくて、嫌な事など全てを忘れていられた、自分でもどうしてそうなのかは解らなかったけれど、とにかく彼と過ごす時間は彼女の中では掛け替えのないモノへと変化して行ったのだ。

 “もっと蒼太と一緒に居たいな”、“一緒の時を過ごしていたい”、と言う幼心に宿る原初の、精神的欲求に端を発したそれはしかし、次第に彼女の中では掛け替えの無い程に、そして比類無き程までに凄絶なモノとなって行った、心の底の底の底、その更に奥深い領域から絶えず沸き上がって来る、自分でも抑えが効かない位に、自分で自分をどうにかしてしまいそうになる程の、想像を絶するまでに強くて激しい、確かなる衝動。

 それを覚え始めた彼女は自分を滅茶苦茶にしてしまいたくて、同じ位に蒼太を滅茶苦茶にしてしまいたくて、そしてその上で二人で一つになりたくて、滅茶苦茶になってしまいたくてどうしようもならなくなってしまって。

 とうとう我慢する事が出来なくなって遂にある時、その思いの丈に突き動かされるようにして一線を越えてしまうモノの、自身が9歳になった折、自宅に遊びに来ていた蒼太を自室へと連れ込んで目を閉じさせると、メリアリアはこの2歳年下の幼馴染みの少年に、自身初となるキスを捧げたのであった。

 それは“バードキス”と呼ばれているモノであり、本当にキスの初心者向けの、前段階みたいなモノだったけど、それでも。
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