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時と運命の調律者
第9章 青年と少女3
 蒼太は自身の仕事の事を、メリーニにはそれほど細かく話してはいなかった。

 ただし“自営業を営んでおり、時折趣味で客さんの人生相談も 受けもっているんだ”とだけ言っていた(勿論、有料であり料金はその時々の状況により異なるのだが)。

 メリーニはそれに対して「ふうぅん、そうなんだ?」とだけ返してくれた、どこか困ったような、それでいて面白いモノを見るような眼差しを向けて。

「・・・・・」

(もしかして気付いているのかな?)

 蒼太も時々、この少女へと意識を向けてみるのだが表面上の事は探れるのに奥の奥、即ち心の内側にまでは入れないでいたのだった。

「・・・また私の中を見ているでしょう?」

「ごめんごめん、気になっちゃって」

 と、うっかり探りを入れている事が見付かってしまう場面もあったがそれはやはり、この少女が魔法や呪術と言ったモノに対しての、ある程度の理解と心得があることを物語っていた。

「・・・・・」

(それにしても。見れば見るほど不思議な娘だよなぁ・・・)

 蒼太は頬杖を付きながら、キッチンに立つメリーニの姿を眺めていたがその姿はどうしてもメリアリアの重なるのだ、・・・感覚が今一歩でどうしてもブレるというのに、直感では間違いなく目の前の少女がメリアリアであると告げていた。

「お待たせ~っ。イカとチーズのリゾット、出来たよ!!」

「ああ。有難うね、メリーニ!!」

 そう言って蒼太は差し出されたリゾットを美味しそうに頬張り始めるモノの、彼女の言うところによると“自分も余り、料理が得意では無い”らしい。

 それでも蒼太が作るモノよりは勝ること幾万倍であったから、蒼太は黙って台所を預け、任せていたのである。

 実際に、彼女の腕前は中々に大したモノがあったが本人は謙遜しているのか、余り褒められても照れるより困ってしまう事の方が多いように見受けられた。

「でも良かったわ、蒼太が喜んでくれて。お陰で作る事が楽しくなって来たもの!!」

「メリーニの作るもの、なんでも美味しいよ?もっと自信持ちなよ!!」

「はいはい。煽てても、何にも出ませんからね!!」

「ちぇっ。なんかもう一品、作って欲しかったんだけどな~・・・」

「そっか、育ち盛りだもんね、蒼太は・・・」

「ちょっと待ってて」とメリーニは告げると、慌てて台所へと足を向ける。
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