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時と運命の調律者
第13章 追憶編4
 後にメリアリアはそう言ったが蒼太にはそれで充分だった。

 共に笑い、共に泣いてくれる人。

 それが蒼太にとってはメリアリアただ一人だけだったのだ。

 そのメリアリアがいま、自身の目の前に佇んでいる。

 それも普段見せるような、明るい顔では決して無い、あの日の顔ー。

 蒼太の両親のお葬式が済んで、二人で泣いていた時のような顔をしていた。

「メリー・・!?」

 組織でのパートナーとなって闘う事となった幼馴染みの姿を見て思わず“嘘だろ!?”と蒼太は唸ってしまった、後で話を聞いた所によれば、何と彼に先立つこと2年も前にメリアリアもセイレーンへと招致されてメンバーとしての就任を果たしており、日々活動し続けていたのだ。

 と言ってもメリアリアと蒼太とではその端緒となった、上からの誘因の理由が全くと言って良い程違っていた、メリアリアの場合は全学年を通してみても秀逸と言っても良い程の魔法と鍛錬(体術、武術のこと)、そして薬学の成績を有していた上に、何よりもその人格の高潔さと適正を認められて、僅か11歳と言う若さでこの秘密組織に属する事となったのである。

 それだけではない。

 弓矢や鞭等を扱うやや難易度の高い、ともすればトリッキーな独自の体術を修め、更には火炎系魔法の最上位をも習得していた彼女はセイレーンの中でも八人しかいない、“女王位”と呼ばれる最上級の階級を与えられてー。

 その最年少にして可憐な姿から、同僚からは“いばら姫”と言う愛称で親しまれていたのだ(武器として刺を自由に出し入れすることの出来る、特注の“茨の鞭”を使っていたことがその名の付いた理由である)。

 一方の蒼太は、例のエルヴスヘイムでの活躍が評価されての大抜擢だったが、二人はその後、色々な任務に就いた。

 大抵は安全な、後方での支援任務が主だったのだが時には戦場で矢面に立たなくてはならない事もあった。

 それでも二人は互いを支え合い、励まし合ってその過酷な世界を、現実を生き抜いて行ったのだ。
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