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時と運命の調律者
第14章 追憶編5
 外から見た限りでは厳しそうなセイレーンの任務も過酷なモノばかりでは決して無く、またその体制も息が詰まるような堅苦しいモノでも無かった。

 組織内には様々な人物(勿論、その正体はセラフィムに通う一般生徒達)がいて、善悪美醜様々な物語が其処此処で展開していた。

 ・・・だけど。

「どうして、何も教えてはくれないんですか!?」

「もっと俺たちを信用して下さい、ってか情報を下さい。このままじゃまるで道化だ!!」

 設立理由や設立理念がそうだから、仕方が無いと言えば仕方が無いがセイレーンは実に秘密の多い組織だった、しかも時折、情報が上役達だけでストップしてしまい、蒼太達一般のファイター達にまで回って来ない事があったのだ。

 それは例えば、犯人の特徴や癖、戦法と言った、実際の戦闘に関するモノはさて置き、事件の背景や真相と言った事柄に関してはその傾向が特に顕著だった。

「君達は、事の真相など知る必要は無い」

 余りの秘密主義の厳しさに、ある時蒼太達はメリアリアと同じ、女王位の一人である“オリビア・フェデラー”に食って掛かった事があったが難無くあしらわれてしまった、“氷雪の女王”の異名を取る彼女は常に冷静沈着であり、よしんば不測の事態や後輩の実態をその目にした場合でも、およそ激高した姿を見た者は、女王位の中でも皆無だったのだ。

「なまじ情報を知る者が多ければ多いほど、それを秘匿する事は困難になる」

 それはとても危うい事だと、オリビアは予見していた、もし将来、諸外国がこのガリアへと侵攻を企てる際に、真っ先に邪魔になるのは自分達のような呪術戦士であり諜報機関でもある。

 その二つを兼ね備えているミラベルやセイレーンの底が知れてしまうことは国の安全保障上、何としてでも防がなくてはならなかったのだ。

 ましてやセラフィムには敵性国家、とまでは行かないまでも、それでも諸外国の工作員やテロリストが常時潜入している可能性もあって(アルヴィン等のハイウィザード達からも“その可能性は極めて高い”と指摘を受けていた)到底、情報及び諜報能力をそこへ向けて公開するような真似は出来なかったのである。
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