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時と運命の調律者
第19章 メリアリアとエカテリーナ
 セイレーンのいばら姫、炎の聖女メリアリアー。

「噂は、聞いているわ。ううん、その姿も、実力の程もね」

「・・・誰っ!?」

 メリアリアが自身の心にフタをして、それでも毎日を懸命に生き抜いていた、5年目の秋の終わりー。

 “それ”は突然、メリアリアの前へと姿を現した、彼女がその日の任務を終えてセイレーンの聖堂から寮への帰路に着こうとしていた、その矢先。

 すぐ近くから、コツ、コツとハイヒールの音が聞こえて来て、慌てて飛び退き様に振り返って身構えると、そこには一人の女性の姿があった。

 年の頃は、メリアリアと同じか少し上くらいだろうか、少しキツめの美人系の顔立ちに切れ長の青い瞳。

 膝の辺りにまで伸びている紫色の、少しカールの掛かっているボリューミーな髪の毛。

 そしてそんな髪に合わせたのだろうか、やや胸元の開いている、紫色のドレスを纏っていた。

「・・・・・」

(なに?なんなの、この人。一体いつの間に・・・!!)

「・・・“あの人”から聞いていた通りの出で立ちね、長いブロンドに美しい顔。煌めきのあるスカイブルーの瞳。羨ましいわ」

「・・・なんなの、あんた」

 つい、以前のお転婆だった頃の口調が出るがそれほどまでにこの時のメリアリアは全身が警戒感で満たされていた、何故ならば、それほどまでに彼女が異質な存在だったからだ。

 目の前の女性そのものからは“嫌な感じはしないモノの、とっても嫌な予感がした”、殺気とか、そう言った類いのモノは一切感じられないと言うのに喉がカラカラに渇いて冷や汗が溢れ、心臓が早く脈を打つ。

「・・・・・」

「・・・・・」

 後ずさって距離をとりつつも、それでも尚も臨戦態勢を解かずにいるメリアリアに、女性は最初の内は、明らかにメリアリアを恨んでいた、恨み骨髄に徹する、とでも言うかのような凄まじい表情を浮かべていて彼女はしかし、程なくクスリと冷たい微笑みをうかべながらもゆっくりと告げた、“そんなに警戒しなくても良いわ”と。

「心配しないで?貴女をどうこうするつもりは無いの。いや、“危害を加えるつもりはない”って言った方が良いかしら?・・・少なくとも今はまだね」

「・・・どうだか」
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