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時と運命の調律者
第19章 メリアリアとエカテリーナ
 そう答える傍らで、メリアリアは“茨の鞭”を装備して背後に炎を召喚し、鞭に纏わせた、それ以上に近付くのならば、と言う意味を言外に込めるモノのこの時、メリアリアの直感は明確に告げていたのである、“目の前の女を何とかしなさい”と、“さもなければとんでもない事になるから”と。

 しかし。

「ふ・・・」

 女性は構わず距離を詰めて来た、コツ、コツとハイヒールの甲高い音が、その音だけが周囲にこだまする。

「・・・凄い“闘気”ね、流石に“女王位”だけのことはあるわ。まともに闘ったなら、どうなるか解らないわ」

 そう言う相手とはなるべく闘いたくない、と女性は独り言のように呟くと、何やら呪いのような言葉を唱えて空中に手を翳した、すると。

 そこには黒い2つのガラス玉のようなモノが顕現していた、どうやら何かのマジックアイテムらしいそれを見た瞬間、メリアリアの直感は告げたのだ。

 “あれを破壊しなさい”とー。

「・・・ふっ」

 メリアリアは素早く息を吸い込むと、吐き出すと同時に地を蹴って跳躍していた、手にした茨の鞭をしならせ、女性が手中にしていた黒いガラス玉を狙う。

 しかし。

「あぶないっ!!」

 今度はそれに女性がすかさず反応して見せた、と言っても身体を動かした訳ではない、何か瞬間移動のような術式を用いてその場から、少し距離がある場所にまで瞬間的に転移する。

「・・・・・」

「・・・あぶなかった」

 彼女は告げた、“本当はあまり、戦闘は得意じゃないの”と。

 その割にはこの緊迫した場に慣れていると言うか、その態度には堂々としたモノがあったが、そんな彼女の様子を見たメリアリアはもう、迷わなかった。

 再び跳躍して距離を詰めると鞭を撓らせて彼女の手の中にある、黒のガラス玉を叩き壊そうとする、しかし。
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