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時と運命の調律者
第2章 VS.怪人A
 なんと後ろから男が追い掛けて来るではないか、三人は泣きたくなるのを堪え、心の中で“助けてくれ”と念じながら山道をとにかく駆けて駆けて駆け下りていく。

 途中で気が付くと、もう一人の男子生徒がいなくなっていた、道に迷ったのか、はぐれてしまったのか。

「うそ、まじ?なに・・・!!?」

「いいから早く逃げよ!!」

 混乱する友人を、もう一人の少女“由美”は必死に制し、叱咤して元来た道を我武者羅に走り続けて行った。

 しかし、そんな彼女達の後ろからー。

「うがあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 あの声が響いて来た、その距離はドンドンと近付いて来る。

 男性の脚力と女性のそれとでは足の速さが違いすぎた、このままではいずれ追い着かれてしまうだろう。

(逃げ切れない!!)

 二人が絶望のどん底に追いやられた時だった。

「ぎゃおぉぉぉおおおぉぉぉぉおおおっっっ!!!」

 パァァァァァンッ!!!と言う、甲高い炸裂音がしたかと思うと怪人の苦しそうな悲鳴が聞こえて思わず二人は足を止めた。

 振り返るとそこには胸を押さえて蹲る包帯男と、その側に立って身構えている全身、忍者のような黒装束に身を包んだ一人の青年の姿があった。

 おでこには鉢がねを巻き、顔半分はマスクに覆われているため表情は読めないモノの、それでも全身から迸る精気と堂々たる体躯から相当に鍛えられている事が伺える。

「・・・こんな所に、顕現するとはな」

「ウヌガアアアァァァァァァァァァッッッ!!!!!」

 青年の言葉が言い終わらない内に、胸を押さえていた怪人は立ち上がるといきり立って彼に襲い掛かって行く、それを。

 青年は跳躍して躱すとそのまま空中でクルリと回転し、怪人の後ろ頭に強烈な蹴りをお見舞いした、そのまま。

 再度蹲る怪人の背後に立つと素早く印を結んで何やら呪文を唱え、一気に手刀を包帯男の心臓えと突き立てた。

「ウ、ウガッ。ガアアアァァァァァァァァァ・・・ッッッ!!!!!」

 そこからは、不思議と血は流れなかった、ただ反対側へと突き抜けた青年の手には、赤く光る不思議な玉が握られており、それを持って青年が、怪人の身体から腕を引き抜くと。

 次の瞬間、その場から包帯男の姿が掻き消すように消えてしまっていたのだ。
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