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時と運命の調律者
第3章 VS.鵺
 人の欲望は、尽きることを知らない。

 それは一体、何故なのか。

 思うに人は解ろうと思えば“足りる”と言うことを知ることが出来る存在なのではないだろうか。

 と言うことはつまり、逆に言えばいつまで経っても“足りる”と言うことを、何故か知ろうとしない存在なのだろう、多分。

 “我ただ足るを知る”。

 この一文が全てを物語っているのであるが、そんな天井知らずな人々の心は時に膨大な“闇”を生み出してしまう。

 それが一カ所に集まると“‘力場”が生まれる、そして尚も成長を続ける力場には必ず“意思”が宿り始める。

 これは特に日本に於いては顕著であることを、人々は知らねばならない。

 日本は龍神の国であり、龍神は万物を生成、発展させる水と風とを守護する存在である。

 それ故、この“エネルギー生成、発展の神力”は、良くも悪くも作用してしまう、要するに神の波動と生命力とに満ち溢れた大地である、と言えば良いだろう、それを表している言葉が一つ。

 “虫が湧く”それである。

「あいつ最近、人が変わったよな?」

 東京丸の内にある、三菱重工のオフィスの風景だ、この世界的企業の中心であるこの会社でしかし、一際異彩を放つ男がいた。

 勝山 充、34歳。

 七年前に結婚して妻と子供に恵まれたが二年ほど前から別居している。

 同僚達は言う、“あいつは変わった”と。
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