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第2章 美和子の部屋


 ……でも、何故あのレストランに行くの?


 彩乃が足を止めて自問する。


 ……わたしったら、本当、何を考えているの?

 女性が好きだからって、何をしようとしているの?

 行ったら、見ているだけでなんか済むわけないわよね。

 じゃあ、わたしもあの動画みたいになるのかしら……

 やっぱり、普通じゃないわ。帰るんなら今ね。


 しかし、足は粛々と目的地へと向かう。

 家から距離はあるが、歩いて行けない距離ではなかった。

 歩いているうちに、にぎやかな通りに出た。


 この通りを駅の方へ行けば、途中にレストランがある……


 心なしか足が早まる。

 自分の思いとは真逆なからだの動きに彩乃自身が驚いている。


 ……わたし、何かを期待しているのかしら……


 レストランの入っているビルが見えた。

「……あら?」

 彩乃がつぶやく。

 昨日あった看板が無い。周囲を見回す。

 まだ午前中だったので、あまり人通りが無い。

 彩乃はごくりと喉を鳴らし、階段を降りてみた。

 白字で「レディスキッチン 園」と書かれた緑色のアクリル製のドアの前に、「本日休業」と書かれた看板が立っていた。

「……お休み……」

 彩乃はほっと深い溜め息をついた。

 ……そうよね、これで良いんだわ。変な道に踏み込まないで良かったんだわ。きっと神様かご先祖様のお導きよ。

 彩乃は階段を上がろうと振り返る。

「あら、彩乃!」

 名を呼ばれた。顔を上げると、美和子が階段の一番上に立っていた。

 そして、その横に、エイコが立っている。
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