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第2章 美和子の部屋
 しばらくは三人並んで歩いていたが、やはり他の人の邪魔になるので、美和子とエイコが並び、その後を彩乃がついて行く形になった。

「彩乃って、何時もみんなの後についていたわよね?」

 美和子が振り返って言う。

「奥ゆかしって言うか、消極的って言うか……」

「そうだっけ?」

 彩乃が答える。

 努めて平静な声を出そうとしているが、これからの展開を意識していた。


 ……美和子のマンションで何があるの?

 ……この二人、付き合っているの?

 ……わたしを誘ってどうするの?

 ……昨日の動画みたいなことになるのかしら?

 ……ああっ、むらむらしちゃう。

 ……でも、こわいわ。帰ろうかな?

 ……いや、帰りたくない……

 …………

 
 やがてデパートに着き、エレベーターで屋上駐車場に出た。

 平日の昼前は意外とがらんとしていた。

 美和子の車は赤い可愛らしい軽自動車だった。

 美和子は運転席に、エイコは助手席に、彩乃は後部座席にと納まる。

 と、美和子とエイコが互いに顔を寄せ合ってキスをした。

 後部座席のベンチシートの真ん中に座っていた彩乃の真ん前でのキスだった。

 互いに目を閉じ、何度も顔に向きを変えながら、それは続いていた。

 彩乃は瞬きもせず、その光景を見つめていた。

「んふふ…… 驚いた?」

 キスを終えて美和子が彩乃に振り返り言う。

「エイコとは付き合って半年くらいになるかな?」

「……そう、なんだ……」

 彩乃はかすれた声で答える。

「美和子さんって、生粋なのよ」

 エイコも彩乃に振り返る。

「わたしみたいに、男の人も、ってタイプじゃなくって、女性一筋なの。それでね、普通だと、わたしみたいなのって敬遠されがちなんだけど、美和子さんは受け入れてくれて……」

「わたし、可愛い娘が好きなのよ」

「じゃあ、わたしって、可愛いんだ」

「そうよ。とっても可愛いわ……」

 二人は再びキスをした。

 彩乃はただただ圧倒されていた。

「それじゃ、行くわよ」

 キスを終えると、美和子は車を発進させた。
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