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第1章 レディスキッチン 園
 ……え? ……

 もぐもぐしていた彩乃の口が止まった。

 千葉のおばさまが田所のおばさまに顔を寄せたかと思うと、二人の唇が触れ合ったのだ。触れ合ったと言う程度ではない。しっかりとキスをしていたのだ。互いに顔を左右に傾け合いながらキスを続けている。互いに唇を離した時、互いの舌先が触れ合っていたのが見えた。二人は寄り添いながら自分たちの席へと戻って行った。

 ……え? 何? 今のって、何だったの? ……

 彩乃は混乱する。手にしたフォークをプレートに置いた。

「ふふふ、驚きましたぁ?」

 そう声をかけてきたのはエイコだった。エイコは彩乃の前の席に座った。

 彩乃はぽうっとした顔で正面のエイコを見る。

「あの、今のって……」

 彩乃はやっとそれだけを言う。

「そう、あのおばさまたち、キスをしていたんですよ。それも舌をからめあうディープなヤツを」

 エイコは言って小さく笑う。彩乃は逆に険しい表情を作る。

「このお店って、そう言う出逢いの場でもあるんですよねぇ」

 エイコは彩乃を見ながら話を続ける。

「そんなの、わたし、知らなかったわ……」彩乃はやっとの事で言う。「単にお食事に寄っただけだから……」

「分かっています。お客さんの反応を見ていたら、それはもう絶対にそうだって分かりますよ」

 エイコは言いながら、彩乃越しにおばさま方の席を見ていた。そして、ぷっと吹き出す。

「今度は、もう一人の佐藤さんが田所さんとキスし始めたわ。千葉さんは田所さんのおっぱいを揉んでいる……」

「ちょっと、やめて……」彩乃は弱々しい声でエイコに言う。「……わたし、帰るわ」
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