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新解釈 紺屋の女房
第3章 久蔵と花魁の出会い
その夜、番頭の佐平の考えをお玉に打診してみた。
嫌がるかと思いきや、
お玉もいたって乗り気であった。
かくして久蔵は吉兵衛の養子となり
下男という身分から
「紺屋」という店の跡取りとして
厳しい修行を受けることとなった。
久蔵は頭のいい子で、
読み書きソロバンを、そつなく覚えていった。
そして15歳となり、
元服(げんぷく=現代の成人式)を迎えた日、
吉兵衛は久蔵に、ついて参れと連れ出した。
「どこに連れて行ってくださるのですか?」
久蔵は吉兵衛に尋ねた。
「うむ。お前も無事に元服(げんぷく)したことだし
ひとつお前を男にしてやろうと思ってな」
しばらく歩いてゆくと、
ふいに大きな門が見えてきた。
「久しぶりに遊ばせてもらうよ」
吉兵衛は門番の男に気さくに声をかけて
さあ、お入りと久蔵を門の中に手招いた。
門をくぐり抜けて久蔵は腰が抜けるほど驚いた。
そこは昼間かと見間違うばかりに
赤い提灯が等間隔で
通りの奥まで煌々と灯っていた。
「父上さま、ここは一体…」
オドオドしながら吉兵衛の後をついていきながら
ここはなんという所なのかと尋ねた。
「ここは遊郭といって、男の遊びだ
一人前の男は皆、ここで浮き世の垢(あか)を流すのだ」
連なっている家屋は
表通りに面した窓が格子になっていて
中を自由に覗くことが出来た。
格子窓の中からは着物を着崩した女達が
乳房の膨らみを強調して男を誘っていた。
「兄さん、遊んでいきなよ
安くしておくよ」
目が合った女は恥ずかしげもなく声を掛けてくる。
「どうだい?好みの女はいるかい?
童貞を捨てさせてもらう女なのだから
じっくりと選べばいい」
選べばいいと言いながら、
なるべく手前の女を選んでおくれよと
吉兵衛は念を押した。
どうやら奥に座っている女ほど高値なのだろう。