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新解釈 紺屋の女房
第5章 高尾太夫との合瀬

「俺は高尾太夫に会いたいんだ
こんなところで酒を呑んでいる場合じゃない!」
待ち合い茶屋で徳利を手に
「一献、呑みなんせ」と酒を薦めるお鈴に
一度だけ肌を重ねた仲とはいえ、
今回はお前に会いに来たのではないと憤慨すると
「太夫の部屋へは、おいそれとは入れないのでありんす
この茶屋で顔繋ぎをするのが大事なのでありんす」と
遊郭の仕組みを教えてくれた。
『なんとまあ焦れったいものなのだな』
まあ、果報は寝て待てというぐらいだ
3年も一生懸命に働いて待ちに待った瞬間なのだから
少しぐらい待たされてもなんということはないと
太夫の到着を今か今かと待ちわびた。

やがて待ち合い茶屋の店先が賑やかになった。
「花魁道中だ!」
「太夫だ!高尾太夫が出てきたぞ!」
花街をウロウロしていた男連中が
口々に高尾太夫を褒め称え、
称賛の思いを口にした。
「到着したようでありんす
あちきはこれにて失礼いたしんす」
お鈴が部屋から出るのと入れ違いに高尾太夫が入ってきた。
「お初にお目にかかります。
手前、紺屋という染物屋の久蔵と申します」
一通り挨拶の口上を申し上げて
久蔵は繁々と高尾太夫の顔を拝見した。
『なんと美しい!
この世にこんなにも美しいおなごがいるとは…』
同じ部屋にいて同じ空気を吸っているだけで
幸せな気分になってくる。
おまけにこの香りはなんであろう?
麝香(ジャコウ)であろうか?
男を虜にする色香が漂ってくる。
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