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新解釈 紺屋の女房
第6章 花魁の嫁入り
久蔵に案内されて現れたのは、
これまた絶世の美女だった。
「紹介します、高尾太夫にございます」
そのように紹介された高尾は
居間の手前の廊下に座り三つ指を付いて
「高尾でありんす、可愛がっておくんなまし」と
頭を下げた。
白粉も塗っておらず、
帯は前帯でなくちゃんと後ろに結び
頭には鼈甲(べっこう)の簪(かんざし)もなかったので
美人ではあるけれど、
それが太夫とはにわかには信じられなかったが
話し方が郭言葉(くるわことば)であったので
太夫本人だと信じないわけにはいかなかった。
「あんた、本当に高尾太夫かえ?」
失礼かとは思ったが吉兵衛は念のために聞いてみた。
「ほんざんす…
あ、年季が明けまして、もはや太夫ではござんせん」
依然として廊下に三つ指をついたままだったので
「そうかい、そうかい、
よくぞこんな馬鹿の野暮野郎に嫁いでくださった」
ささ、こっちに入んなよと
吉兵衛は高尾を居間に座らせた。
「ほんにべっぴんさんだねえ」
男に買われて股を開いてきたおなごだから
きっとろくでもないおなごだと思っていたお玉も
礼儀正しく美しい高尾を褒め称えた。