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JUN(ジュン) ~メールの恋人~
第8章 決着
「美智子ー!!」 ドアが荒々しく開かれた、
いや、正確には開けられようとした。
開こうとしたドアがチェーンロックにより、
開かれることを拒絶した。
純子が外出したあと、沖島が施錠していたのだ。
「くそっ!くそっ!!」
卓也が力まかせに何度も開こうとしたが、
まるで嘲笑うかのように
ガチャガチャと鈍い金属音を発するだけだった。
「やれやれ、もう突き止めやがったか…
純子の奴、裏切りやがったな」
そう言いながらも、
まるで何事もなかったように注送を続けた。
美智子は頂点に達しかけていたが、
卓也の呼び声に
「女」から里中美智子へと覚醒した。
『助けて!卓也、助けて~!!』
心の中で美智子は助けを叫んだ。
だが声にして発することができなかった。
卓也に救いだされることは、
沖島と繋がっているこの姿を
見られてしまうということに他ならなかったからだ。
『ああ…今すぐにでも助け出して欲しい…
でも、この姿は見られたくない…』
「沖島ー!そこにいるんだろ?
頼む!開けてくれ!…
俺が過去にお前に何かしたのなら謝る!
お願いだ、もう俺たちを許してくれ!!」
いつしか卓也の声は涙声になっていた。
「卓也‥‥」
卓也の名を呼んだのは美智子ではなかった。
それは、美智子と体を重ねている沖島が発したのだった。
だが、沖島が発した声であるにも関わらず、
その声は…女性の声だった。
美智子を貫いていたベニスがみるみる萎んでゆく。
やがて芯のなくなったソレは、
ツルンと美智子の中から抜けて行った。
ポツ…美智子の胸に雫が落ちる…涙だ。
沖島が涙を流していた。
爬虫類の顔が柔和になり、
阿弥陀如来の如くやさしい顔立ちになっていた。