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JUN(ジュン) ~メールの恋人~
第4章 JUNと直接会うことにした
「あ、もうこんな時間…帰らなきゃ」
わざとらしく腕時計に目をやり、美智子は席を立とうとした。
「よかったら送っていきますよ。
いや、送らせてください」
沖島がポケットから車のキーを取り出し、
美智子の目の前でチャラチャラと揺れ動かした。
「いえ、そんなご迷惑ですし」
「今日は美智子さんから
情報を聞き出そうと失礼な事をしたんだ。
せめて家まで送らせていただかないと申し訳ない。 あ、車に乗せて時間稼ぎして情報を聞き出そうなんて思ってませんから。
いつか実力であいつを越えてみせますよ」
だから安心してくださいと言う彼の執拗な申し出に断われ切れなくて、
ついに「では、お願いします」と甘えてしまった。
彼の車はショッピングモールの地下駐車場に停めてあった。
赤いBMW。
「すごくすてきな車に乗ってらっしゃるんですね」
「いやあ~、恋人もいない僕は
高速をかっ飛ばすのが唯一の楽しみでね。
その楽しみの為に買ったようなもんです」
住所を教えてください。
ナビで案内してもらいますので。
沖島の指がカーナビの画面に伸びた。
いえ、口頭で道案内させていただきますと
断わろうと思ったが、
あまりにも失礼かと思い渋々教えた。
運転中も彼は饒舌でよく喋った。
美智子は疲れているのか
少し静かにしほしいなと思った。
やがて車の揺れが気持ちよくて睡魔が襲ってきた。
彼の問いかけも
耳にグヮングヮンという響きとなり
はっきりと聞き取りにくくなった。
やがて寝息をたてて深い眠りに落ちてしまった。
「…ようやく効いてきたか、
まったく手間をとらせやがって」
実は先ほどの店で
美智子がお手洗いに行くため席を外したときに
コーヒーに睡眠薬を投入しておいたのだった。