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第10章 すれ違い

部屋の前につくと奈緒の部屋のドアが空いていた。
(奈緒が帰ってきているっ!!)
智輝は走る足を止めずにドアに向かった。

「奈緒ッ!!」

開いていたドアから智輝は大声で叫んだ。
しかしそこにいたのは奈緒ではなかった。
作業着を来た数人の男性であった。
男たちは驚いた顔で汗だくの智輝を見る。

「か、梶野さんっ!!」

背後から声をかけられて智輝は振り返る。
そこには泣き出しそうな顔をした弥生が立っていた。

「これは……」

なにがなんだかわからない智輝は作業着の男たちに事情を確認した。
作業着の男の責任者らしき者が簡単に事情を説明するのを智輝は驚きながら聞いていた。

「引っ越し……奈緒が……ですか……？」
「えっと……はい……荒井奈緒さんですね……」

依頼票を確認しながら答える。