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第3章 言葉責め

「今日はどこに連れてってくれるの？」

奈緒が助手席に笑いながら乗ってくる。
いつもは受け付けの椅子で上品な笑顔を浮かべている奈緒だが、恋人の助手席に乗るときは自然な笑顔を見せる。

その笑顔を見ると苛めることが非常に躊躇われてしまう。
このまま普通にしておきたいという気持ちがつい現れてしまう。

「今日はちょっと遠出して岬のほうに行こうと思うんだ。そこから見える夕日が凄く綺麗なんだって」
「えっ!?　本当ッ!?　楽しみぃ！」

シートベルトを締めながら奈緒は子供のような無防備な笑みを浮かべていた。

車での移動中も、夕暮れまで遊んだ海鮮市場でも二人は普通の恋人のようにはしゃいだ。
もちろんその間、奈緒を蔑むような言葉は言わない。
普通の恋人と同じように過ごしていた。
夕日が海に沈んでいくのを防波堤に座って眺めていた。

「なんか海が真っ赤に燃えているみたいだね」

そんなことを呟きながら奈緒は智輝の肩に頭を乗せた。
智輝は黙ってその頭を抱き寄せて、優しくキスをした。