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初めてはお兄さんと
第1章 お酒に酔った勢いで
 お兄さんは赤ら顔で頭にハテナを浮かべている。
 服に手をかけてシャツ、ズボンと脱いで下着姿になる。露になっていく肌に、お兄さんは状況を察してきたのか慌てて目をそらす。
「ゆりちゃん、何いってるの? 早く服を着て。冗談にしては質が悪いよ」
 そんな言葉を慌てて小さな声でついだお兄さん。私は聞こえない振りをして近寄ってブラジャーのホックを外した。
「冗談じゃないです。私はお兄さんに抱かれたいんです」
 堪らなく恥ずかしかったが、ここまできては引き返せない。後悔のないようにやり切ってしまわないと。
「そんなこといわれても、奥さんだって、もうすぐ子どもだって生まれるんだ。二人を裏切るようなことはできないよ」
 お兄さんはベッドに乗っているタオルケットを手繰り寄せて私に差し出す。
「誰にもいいません。一度だけ、私の初恋の思い出に。私、抱けないくらいに魅力ないですか?」
 私の方を見ないでお兄さんは首を横に振る。
「理性に負けて君の誘いに乗りそうだよ。でも、そんなことになっては裏切る人が多すぎる……」
 受け取ったタオルケットをベッドの下に落として、パンティーも脱ぎ取った。
「ばれませんよ。お兄さんが誰かに離さなければ。私は初めてをどうしてもお兄さんにもらって欲しいんです」
 お兄さんの手を取って胸に持っていった。心臓がうるさいくらいに鳴っている。
 胸の感触にやっとこっちを向いたお兄さんに顔を近づけて唇を重ねた。
 肩を掴まれて引き離される。
 お兄さんは立ち上がって私に背を向けてドアに向かう。立ち上がった時目の前を通り過ぎた股間の部分が大きく膨らんでいたことを私は見逃さなかった。
「僕は今夜この部屋に来ていない。見ていない、聞いていない。このことは忘れよう。いいね?」
 お兄さんはドアにそういっていた。そして、静かにドアノブを回し部屋から出て行った。
 私の長い片思いは終わりを迎えた。布団に突っ伏すと涙が溢れた。悔しいのか悲しいのか、自分でも分からない。枕を濡らしながらいつの間にか私の意識は遠のいていった。
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