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冬雪記
第2章 調教
 部屋は亜由美と竹蔵だけとなった。

 亜由美は背を向けて座っている。

 竹蔵は黙ってその白い背中を見つめている。

「……奥さん……」

 低い声が亜由美を呼ぶ。

 亜由美に背がびくっと震えた。

「こっちに向きな」

 亜由美はカーペットの上をゆっくりと動く。

 鉄の鎖がコンクリートに接して冷たい音を立てる。

 竹蔵に向き直った亜由美は手で胸元と陰部を隠して正座する。

 竹蔵はそんな亜由美を無遠慮に見ている。

 相変わらず突き通すような視線を亜由美は避けている。

「ふむ……」

 竹蔵は納得したように呟く。

「これは行けそうだな……」

 竹蔵はそう言い残すと、扉を軋ませて出て行った。


(……何? 何をしようと言うの?)


(昇一の言った、調教って、どう言う意味なの?)


(隆昭は、どうなったの?)


(全裸で鎖に繋がれて……)


(昇一の趣味って、なんなの?)


 様々な疑問が亜由美の頭を駈け巡る。

 その中で、一番大きな疑問が浮かんだ。



(……わたしは一体どうなるの……?)



 と、扉が軋みながら開き、竹蔵が木箱を乗せたテーブルワゴンを押しながら進んで来た。
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