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冬雪記
第2章 調教
 亜由美は座っているカーペットの端に座り、大部分を捲りあげて自分のからだの前を隠していた。

 竹蔵はそんな亜由美に一瞥をくれたが、何も言わなかった。

 竹蔵はワゴンを亜由美の前まで持ってくると、そこで停めた。

「……奥さん……」

 竹蔵は木箱の中を掻き回しながら言う。

「旦那さんの趣味って知りたくないかい?」

「……」

 亜由美は両手でしっかりとカーペットを押さえ、無言で竹蔵を見ていた。

「旦那さんの趣味はね……」

 竹蔵は亜由美が答えていないのも構わず、話を続ける。

「……これさ……」

 そう言いながら木箱から長い荒縄を巻いた束を取り出した。

「この別荘の庭木を冬囲いした残りなんだがね…… あ、だからと言って、旦那さんは冬囲いが趣味じゃない」

「……じゃあ、何なのよ?」

「ははは、やっと口を開いたね」

 竹蔵は笑ったが目は笑っていない。

「分かるだろう? 何も知らない初心な娘じゃないんだから」

「分からないわ」

「旦那さん、結構乱暴だろ? さっきも罵られて叩かれていたじゃないか」

 亜由美は、はっとする。

「……夫の趣味って……」

「そうさ……」

 竹蔵は縄の束をコンクリートの床に抛った。

「相手の苦しむ顔を見る事さ。わしはその手伝いだよ……」
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