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おはようのキスからおやすみのキスまで
第1章 朝
伊吹の偏頭痛は今に始まったことじゃない。既に慢性化している状態で、特に真夏と季節の変わり目に症状が酷くなることが多い。美容専門学校で知り合った2人はかれこれ6年来の付き合いで、伊吹の頭痛に対する対処法も、渚は既に把握済みだ。
「なにか食べてから薬飲む?」
「いや、いい。このまま飲む」
渚から受け取った錠剤を、手慣れた感じで伊吹は口に含む。ペットボトルの水と一緒に喉奥へと流し込んだ。事前にキャップを開けておいてくれたのは渚の配慮だろう。
この暑さで身体の水分を奪われ、喉がカラカラに乾いていたところだった。寝起きで飲むなら冷えた水より、常温の水がちょうどいい。サイドテーブルには汗拭きシートと濡れタオルも置かれていて、渚らしい気遣いに伊吹の口許が緩んだ。
「サンキュ」
「ううん」
大した事はしていないと渚は謙遜するが、彼女の細やかな配慮は伊吹も舌を巻くほどだ。汗を拭くなら濡れたタオルやシートが適切だし、常温の水を用意したのも、寝起きで胃腸機能が低下している体の負担を考えての事だろう。本当に些細なことではあるけれど、それを誰に指摘されるまでもなく普通にやってのけるのが渚の長所でもあり、伊吹が好ましく思っている部分でもある。
「……あっちぃ」
水分補給した伊吹が一息ついた時、冷房の風量が全くないことに気がついた。
もわっとした熱気が室内にこもり、不快そうに顔を歪める。エアコン室内機を見上げても稼働している気配はない。
「エアコン、やっぱり駄目か?」
伊吹が尋ねれば、渚は困ったように眉尻を下げた。
「うん。全然動かない」
「まじかよ……マジで壊れたの」
数日前から調子の悪かったエアコンは、昨日の夜、ついに動かなくなってしまった。
前に新品交換してから4年しか経っておらず、エアコン自体の寿命にしては早すぎるから故障だろう。そうなると修理が必要になってくるけれど、肝心の修理業者がいつ来てくれるのかが謎だ。
「なにか食べてから薬飲む?」
「いや、いい。このまま飲む」
渚から受け取った錠剤を、手慣れた感じで伊吹は口に含む。ペットボトルの水と一緒に喉奥へと流し込んだ。事前にキャップを開けておいてくれたのは渚の配慮だろう。
この暑さで身体の水分を奪われ、喉がカラカラに乾いていたところだった。寝起きで飲むなら冷えた水より、常温の水がちょうどいい。サイドテーブルには汗拭きシートと濡れタオルも置かれていて、渚らしい気遣いに伊吹の口許が緩んだ。
「サンキュ」
「ううん」
大した事はしていないと渚は謙遜するが、彼女の細やかな配慮は伊吹も舌を巻くほどだ。汗を拭くなら濡れたタオルやシートが適切だし、常温の水を用意したのも、寝起きで胃腸機能が低下している体の負担を考えての事だろう。本当に些細なことではあるけれど、それを誰に指摘されるまでもなく普通にやってのけるのが渚の長所でもあり、伊吹が好ましく思っている部分でもある。
「……あっちぃ」
水分補給した伊吹が一息ついた時、冷房の風量が全くないことに気がついた。
もわっとした熱気が室内にこもり、不快そうに顔を歪める。エアコン室内機を見上げても稼働している気配はない。
「エアコン、やっぱり駄目か?」
伊吹が尋ねれば、渚は困ったように眉尻を下げた。
「うん。全然動かない」
「まじかよ……マジで壊れたの」
数日前から調子の悪かったエアコンは、昨日の夜、ついに動かなくなってしまった。
前に新品交換してから4年しか経っておらず、エアコン自体の寿命にしては早すぎるから故障だろう。そうなると修理が必要になってくるけれど、肝心の修理業者がいつ来てくれるのかが謎だ。