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おはようのキスからおやすみのキスまで
第1章 朝
「なに」
「やだってば」
「何で止めんだよ」
「変なことしようとしてるもん」
「別にいいだろ」
 目に見えて不機嫌な伊吹に渚は少し動揺する。怒っているというより拗ねているようにも見えるが、伊吹の機嫌を損ねてしまった理由が渚にはわからない。悲しいかな、彼女は繊細な男心に関しては考えが鈍い残念女子だった。
「渚はゲームやってろよ。俺は俺で勝手に触るし」
 素っ気なく放つ伊吹はサディストな傾向がある。と言っても痛いことは一切しないし、渚が怖がることも絶対にしない。言葉で軽く辱しめる程度だ。ただ厄介な性癖も持ち合わせていて、渚が抵抗すればするほど伊吹の行為は荒々しくなる。余計に興奮を覚えるらしい。
 故に、下手に抵抗すれば痛い目を見るのは自分なのだと渚は理解している。こういう時は潔く諦めて身を任せてしまうのが賢明だが、わかっていても羞恥心が失われるわけじゃない。むしろ恥ずかしさの方が勝ってしまうことが大半で、けれど渚が本気で嫌がっていないことは伊吹は当然見抜いている。ただ単に羞恥からくる渚の弱々しい抵抗は、残念ながら伊吹の加虐心を煽るだけに過ぎなかった。
 汗ばむ項に生温かい舌が這う。感じる場所を執拗に舐められて、せり上がる快感に渚は瞳を潤ませた。
 反射的に逃げようと両肘を立てた時、両脇から差し込まれた伊吹の手が胸の膨らみを包み込んだ。服の上から柔肉をやんわりと揉みしだき、伊吹は確実に彼女の感度を高めていく。
「ん…、あ……」
「へー……ノーブラかよ。えっろ」
 嬲るような口調に渚は顔を赤らめる。そんな年下の彼女の反応が伊吹にとっては愛らしく、今度は渚の耳朶に唇を寄せて軽く息を吹き掛けた。
 華奢な肩がわかりやすいぐらいにぴくっと跳ねる。耳と首筋が弱い彼女は、この程度の愛撫でも過剰な反応を見せてくれる。それが意図的なものではなくても、伊吹のやる気スイッチを押すには十分な効力だった。
「……こっちも触って欲しいよな?」
 指し示された胸の頂は、服の上からでもわかるくらいにぷっくりと膨れ上がっていた。
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