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ノーサイドなんて知らない
第10章 幸せな時間
熊野さんは、主にアスリートに多く起こる膝や膝の故障に関する外科手術のエキスパートとして、名前が露出するようになった。

症例を論文に纏める際は、
私も翻訳のお手伝いをした。


アメリカでも、若いながらも外科手術の機会を与えられて、
幸いにも実績を積むことが出来て、
家族や大学の指導を受けた教授からも勧められて、
それに特化した病院を設立することになった。


企業や個人のアスリートとも契約して、
スタートから順調で忙しい毎日になった。


私は、熊野さんの病院で、
論文の翻訳や、海外からのアスリートとの連絡や通訳を手伝いながら、子育てもしていた。

勿論、熊野さんは変わらず、
私のことを甘やかしてくれて、
いつも仲良く過ごせていた。


もう妊娠しないようにと、
手術もしてくれたと聴いた時は、
驚いてしまった。


「痛くないの?
大丈夫なの?」と、
間近で見ようとすると、
「茉莉(めあり)、なんか恥ずかしいよ」と、
くすぐったそうに笑った。


それからは、避妊も考えなくて良くなったので、
それまで以上にセックスを楽しめるようになった気がした。


私と熊野さんが仲良くしてるのについて、
子供達も嬉しそうで、
時々、邪魔をするように優(まさる)さんが間に入ろうとすると、
「優(まさる)ちゃん、ダメだよ。
ママとパパは、仲良くしたいんだからさ」と、
上の二人が少し大人びた言い方をするので、
みんなで笑ってしまうこともあった。



健(たける)さんが小学校6年の時だった。

おねだりもわがままも言ったことがないのに、
突然、心臓が止まりそうなことを言った。


「僕ね、アメリカ行きたい。
ダメかな?」
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