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ノーサイドなんて知らない
第3章 知らないのは私だけ?
「あんまり遅くまで居ると悪いから、
帰るね」と言う熊野さんに、

「あの…、さっき、検索してみたんです。
ラグビーとか、熊野さんの会社のラグビー部のこと…」

「うんうん」

「ラグビーは難しくて、
殆ど理解出来なくて…」

「そりゃそうかもね?
今度、一緒に何かの試合観ながら、
教えてあげるよ」

「それと、熊野さん、
凄くたくさん、ファンの方がいらっしゃるみたいで…」

「えっ?
まあ、ファンは居るけど、
そこまでは…」

「私なんかが一緒に居たら、
ご迷惑なんじゃないかと…」

「そんなことないよ。
言ったでしょ?
一目惚れだから」

「だって、私なんか…」


熊野さんは、私をソファに座らせて、
抱き締めながら背中を撫でてくれる。


「一目惚れは、
勿論、外見も可愛いなって思ったのが大きい。
全然、お化粧とかしてないのに、
可愛いなって思った。
それとさ、凄く気を遣ってくれてたじゃん。
新幹線の座席でも、
俺、大きいから狭いだろうなって、
間の肘掛けみたいなヤツ、上に上げて、
自分はなるべく端っこに座ってくれたりさ。
そういう気遣い出来るの、良いなって思った。
声も可愛くて、
俺、茉莉(めあり)みたいなのんびりした優しい喋り方も好き。
背も小さくて、一生懸命、荷物持ってたのも、
何もかも、可愛かった」

私は耳まで紅くなってたと思う。

「倒れて、吐いちゃったのは、
びっくりしたよ?
なんか、重篤な疾患だったらって心配した。
あ、吐いたりするのはね、
練習とかでも普通にあってさ、
介抱するし。
俺、医学部行ってたけど、
野郎ばかりで、
酒とかも結構飲んでたから、
そういうの、気になんないの。
咳喘息だって聞いて、
原因判れば対応出来るし。
相貌失認も、知識として知ってたから。
結構いるんだよね?
だから、気にならない」


熊野さんは、
優しく髪も撫でてくれてる。


「しかもさ、こんなにお料理上手なのは、
もう感動ものだよ?」と言うと、
頬をそっと撫でる。


「他のオトコに盗られたくないから、
ホント言うと、
このまま、キスして押し倒して、
自分のモノにしたいくらいだけどさ。
茉莉(めあり)には、絶対嫌われたくないから、
ゆっくり関係を深めていこうと思ってるんだ。
チキンだよな?」と言うと、
そっと額にキスをした。

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