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ノーサイドなんて知らない
第3章 知らないのは私だけ?
「私…こうやってキスしてる熊野さんの顔も覚えられないの。
そんなの、嫌ですよね?
それ以上のことしても、
覚えられないの。
本当にごめんなさい」と言いながら、
泣いてしまう。


「だから、お付き合いしても、
すぐにダメになっちゃって…。
キスしたオトコのこと、
忘れるんだって、罵倒されて…」


「忘れても良いよ?
毎回、初めての気持ちで、
ドキドキしながらキスしようよ。
顔、覚えなくて良いよ。
だってさ、それ、生まれつきなんだもん。
その分、他のこと、覚えて?
俺がどんなキスをするかとか、
もっと他のこと…」


そう言いながら、
角度を変えたり、
顔中にたくさん、キスをしてくれる。

首筋にキスをして、
鎖骨の処を舐めたりして、
胸にもそっと触れると、
手を止めて、
「ダメだ。
これ以上すると、
ホントに止まんないからな。
ゴム、持ってないし。
あー、おっぱいとかに埋もれたいけど、
我慢する!」と言って、
額にキスをしてくれる。


「茉莉(めあり)、嫌じゃなかった?」と言うので、
私は首を横に振った。


「キス以上のこと、
したいって言ったら、
困る?
嫌かな?」


「…したこと、ないから…」


「…そうなんだ」


「この歳で、馬鹿みたいでしょ?」と言うと、
「だったら、余計に大事にしないとね?」と言って、
瞼にキスしてくれて、
「じゃあ、帰るね?
あ、今日の写メ、まだだったね?」と言うと、
ポケットからスマホを出して2人の顔を撮ったけど、
私の顔は全然可愛くなかった。


「初めてキスした夜なのに、
なんか、表情が硬いな」と言うと、
いきなり頬にキスして、パシャっともう一枚撮った。


「ほら、こっちの方が、
可愛くない?」と無邪気な顔で笑うと、
「次は日曜か。
電話しても良いよね?
戸締りとか、気をつけて?」と言いながら、
熊野さんは帰って行った。


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