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ノーサイドなんて知らない
第3章 知らないのは私だけ?
タクシー乗り場でポツンと待っていると、
選手を乗せたらしい大型のバスが通り過ぎる。

窓越しに、
私を見てる顔があったような気がしたけど、
そのまま、暫くタクシーを待ってみた。

そして、どうやらここにはタクシーは来ないかもしれないと思って、
乗り場の処に書かれたタクシー会社に電話をして、
車を回して貰った。


おじいちゃんのような運転手さんが、
「この辺りはみんな自家用車だからね」というようなことを言われて笑われてしまう。


空港に到着すると、
まだ搭乗までに時間があったので、
ターミナルの中でお土産をのんびり見てから、
カフェに入った。

子供向けのラグビーの本を読みながらお茶を飲んでいた。



ぼんやりしていると、
スーツ姿の身体が大きい人たちがやってくる。

熊さんの行列みたい。
お喋りとかはせずに、
きちんと歩いてる感じだった。


列が乱れて、
その中の1人がこちらに来て、
「茉莉(めあり)、どうしてここに?」と言った。


「やだ。
見つかっちゃった。
試合、観てみたくて…」と言いながら、
子供向けの本を慌てて閉じると、
熊野さんは嬉しそうに笑ってた。


「さっき、バスから見えて、
名前呼んでみたんだよ。
でも、まさかなって思って…」と言って、
私の手を握る。



「おい、クマ!
ナンパしてるのか?」と、
熊さんの行列から声が掛かる。


「いや、彼女が観に来てくれてて…」と大きい声で言うので、
知らない人まで私の方を見る。


中には、スマホを向ける人も居て、
ビックリしてしまうと、
「あ、一般の人なので、
写真は辞めて貰えますか?」と、
熊野さんが庇うようにしてくれる。


熊の行列から、1人、近付いてきて、
「クマ、週刊誌の記者も居るから、
写真、気をつけな?
なんなら、こっちに連れてきたら、
みんなでガードするぞ?」と言って、
私に会釈して行ってしまった。


「そうだな。
茉莉(めあり)、一緒においで。
こっちの方が目立たないかも」と言うと、
私のコートとコーヒーを持って、
「ん、これじゃ手が繋げないから、
ついてきてね?」と笑う。


私はバッグと本を持って、
慌てて熊野さんについて行った。





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