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ノーサイドなんて知らない
第5章 蜂蜜みたいに甘い夜
ホッとしたら、ちょっと茫然としてしまって、
熊野さんにもたれかかってしまった。

髪を撫でてくれる。


「あれ?
医学書がたくさんあるね?」

「翻訳してるのは、
殆ど医学書と論文なんです。
だから、薫さんのお手伝いも出来るかも。
あ、夕食、作らないと…。
先週、ニラレバって言ってたけど、
本当にそれで良いの?」

「そんなの作れるの?」

「一応…」

「白飯も?」

「勿論!」

「何か手伝う?
あ、トイレ掃除とか、風呂掃除は?」

「そんな…」

「俺、そういうの、得意だから」と笑うので、
「じゃあ、お風呂掃除、お願いしても良いですか?」
と言うと、
嬉しそうに頷いた。


「それとさ…。
今晩も泊まっても良い?」と言われて、
心臓がドクンっと鳴った気がした。


「茉莉(めあり)が嫌なら、
飯、食ったら帰るよ?
でも、今日は、
指輪を交換し合って、
プロポーズっていうか、
ちゃんと結婚を前提に付き合って欲しいって言って、
承諾もして貰って、
両方の親にも紹介し合った記念日だから、
一緒に過ごしたいな?」


恥ずかし過ぎて、
思わず熊野さんの胸に飛び込むように抱きついてしまって、
「一緒に居て?」と言った。


「本当に良いの?
俺、多分、我慢出来ないよ?
野獣になるよ?」と笑う。



「お着替え、持ってきてくださいね?」と言うと、
「うん。
ついでに明日の支度もしてくるよ?」と、
額にキスをしてから、
バタバタと部屋から出て行った。



その後、
何をしていたのか良く思い出せなかったけど、
リクエストのニラレバ炒めや、
春雨サラダ、
卵スープなんかを作って、
のんびり食べた。


お風呂は私が先に入って、
その後に熊野さんが入った。



ストレッチをする熊野さんを待ちながら、
緊張して震えてしまってることに気付いてしまう。



震える手で指輪にそっと触れてみる。
そして、自分の格好を見てみる。


パジャマにロングカーディガンが、
ちっともセクシーさはないし、
脱がされるところを想像してみても恥ずかしい。



そんなことを考えていたら、
「茉莉(めあり)、どうしたの?」と、
ストレッチを終えた熊野さんが、
ソファに座る私の隣に座った。


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