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ノーサイドなんて知らない
第5章 蜂蜜みたいに甘い夜
朝、早く起きるのはそんなに苦ではないし、
いつも目が覚めていたけど、
起きようとする私をいつも熊野さんは無意識で抱き寄せて、
そのまま丸まって二度寝しそうになるのが、
少しだけ困ったりはしていた。


そっとその手から抜け出して、
落ちているパジャマを拾って着ると、
キッチンで簡単な朝食の準備をする。

シャワーだけ浴びて部屋着に着替えてから、
お湯を沸かしてアメリカンを淹れて、
熊野さんを起こしに行く。


そんなに寝起きは悪くないけど、
おはようのキスをたくさんしないと、
なかなか起き上がってくれない。


一緒に朝食を取って、
ジャージにダウンコートみたいなのを手に仕事と練習に向かう熊野さんを送り出す。


簡単な掃除をしたり、ゴミ出しをしてから、
翻訳の仕事をする。

3時頃に、食材の買い物に行く日もあった。
1人分だった時より、
どんどん食材が無くなるので、
日曜日だけの買い物では足りなくなってしまうようになった。


そして、土曜日には大抵、試合に行くようにもなった。

遠征の時は、私は当日入りして、
帰りは一緒に合わせるようにしていた。


今季で引退という話も、既にチームの方にはお話しているそうで、
「まだまだやれるのに?」と、
チームメイトの方には言われているようだった。


相変わらず、子供用のラグビーの本を読みながら、
真剣にゲームを観るようになって、
少しずつルールを理解しようとはしていたけど、
やっぱり難しいのと、
激しいプレイが多いので、
毎回、涙目になりながら観戦していた。


チームの方は気さくに話し掛けてはくださるけど、
勿論、顔を覚えることは出来なくて、
声や仕草で判断するようにしていた。


一番親しくさせていただいていたのが、
キャプテンをされているという早川さんで、
奥様も時々、試合にいらっしゃるのでご一緒させていただくこともあった。

元モデルさんだという奥様は、
ご主人様より長身で、
物凄く素敵な方だったけど、
勿論、私は顔を覚えることが出来なかった。

でも、そこまでスタイルが良い女性は滅多に居ないし、
声にも特徴があったので、
判断するのは簡単だったりした。
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