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ノーサイドなんて知らない
第6章 引退、結婚とパパラッチさん問題
「でしたら、是非、お写真、
お願い出来ますか?」と言って、
外部には公表していない教会での身内のみの結婚式の日程を伝えた。


「プロのカメラマンに依頼しますので、
報酬はお支払いさせてくださいね?
披露宴はその翌日、みなとみらいのホテルなんです。
そちらは式場のカメラマンさん、
居るみたいで…」


「良かったら、両方、
撮らせてください。
なんかワクワクしてきた」
と、岡村さんは笑いながら言ってくれる。


そして、その後もなんだか楽しそうに熊野さんと山の話をしていた。

よくよく話をしてみると、
学年はだいぶ違うけど、
中高同じ学校だったらしくて、
共通の先生の話とかをしながら大笑いしていた。


途中で、「竹村も、同窓生だよ?」と言って、
呼び出すことになって、
結局、夜までお酒を酌み交わして楽しそうにしていた。


竹村さんは、
あの記事を無理矢理、通したことで、
編集部を辞めることになったと聞いて、
申し訳なさで一杯になってしまったけど、
「おかげで、違う部署になれて、
結果オーライです」と笑っていた。


元々やりたかった文芸誌の担当になれたので、
毎週毎週、ハイエナみたいに外を走り回らなくて良くなって、
自分の時間も出来たから、
物書きも再開してると言っていた。


私が翻訳した竹村さんの記事を見せて、
「ほら、ここに、
私の署名、あるでしょ?
実は紙の上ではずっと前に知り合ってたんですね?」と笑った。


でも…。
勿論、竹村さんのことも、
顔は覚えてられなかった。


「相貌失認か。
結構居るんだって聴いてますよ。
むしろ、盲目の人って外部に思われてた方が楽なこと、
あるでしょうね?
でも、その分、他の記憶力、凄いですよね?」と言ってくれる。


「竹村さん、
いつか、相貌失認のことも、
記事で書いてくださいね?
あまり知られてなくて、
子供時代に酷い扱い受けてる方とか、
多いと思いますから。
私もね、結婚式に呼べる友人って、
1人も居なくて…。
顔も覚えられないなんてって言われて、
いつも一人で居たから」と笑うと、
「良いじゃん。
こうやって、判ってくれるヒトが少しでも居ればさ」と、
熊野さんは私を引き寄せて額にキスした。


「やだ。
お客様の前で!」と言うと、

「そうだよ。
先輩の前でさ」と、
竹村さんは笑った。
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