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ノーサイドなんて知らない
第6章 引退、結婚とパパラッチさん問題
結婚式は、本当にこじんまりとしたものだった。

身内と仲人ご夫妻、
熊野さんのチーム関係者。

カメラマンの岡村さん。
それにレポート書くからと竹村さん。


その様子は、
たくさんの写真にして岡村さんが残してくれた。



そして、披露宴は、
そのメンバーに、
両家の父親や祖父の仕事関係者が加わった。

和やかに進行した後、
前々から約束していた記者会見に2人で臨んだ。


たくさんのフラッシュが焚かれて、
眩しさに眩暈がしてしまう。


前に座るヒトたちは、
本当に目鼻はついてるけど、
同じ顔にしか見えなくて、
改めて自分の病気を実感した。


熊野さんが所属していた会社の広報の方が、
司会進行をしてくださり、
「新婦は一般人なので、
基本的にご質問は熊野の方に…」と言って、
会見は始まった。


「お名前は?
なんて呼び合ってるんですか?」と言われて、
熊野さんは、
「一般人なので、名前は控えさせていただきます」と言うと、
不満そうな声が上がる。


何度も私にも質問が飛んで、
その度に熊野さんを見つめて、
困惑した表情を浮かべてしまう。


「これじゃあ、皆さん、納得しないですよ?」と、
若干怒りを含んだ声が上がって、
私は思わずマイクに向かって声を上げてしまった。


「あの…皆さんって、
どなたのことですか?」


「いや、視聴者さんとか…」


「こんな個人的なこと、
報道する価値があるのでしょうか?
もっと、社会的な意義のあることに、
公共の電波は使われるべきではないでしょうか?」


「いやいや、熊野さんは、
有名アスリートで…」


「引退したから、
元アスリートです。
今は一般人ですよね?
単なる大学生になるんですよ?
それでも、また、
追い掛けられるなんて、
如何なものかと思いますが?
えっと…お名前は?
神田さん?
では、神田さんのご家族さまや大切な方が、
自宅の前や仕事場やスーパーで待ち伏せされたり、
写真撮られたりしたら、
どう思われますか?
それと同じではないでしょうか?」
と言うと、
神田さんという記者の方は、
お隣のカメラマンさんと顔を見合わせると、
下を向いた。

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