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ノーサイドなんて知らない
第6章 引退、結婚とパパラッチさん問題
「私には生まれつきの障害があります。
相貌失認と言って、
人の顔を認識出来ません」


ザワザワした後、会場が静まり返った。


「毎日、見ている熊野さんの顔は勿論、
自分の顔も認識出来ません。
勿論、今、目の前にいらっしゃる皆さまのお顔も、
覚えられません。
お声とか、仕草とか、特徴的なものを覚えて、
初めて認識出来る程度なんです。
先程、お話した神田さんも…、もう判らなくて…。
その辺りに座ってらっしゃったのは覚えてますけど、
スーツで青系のネクタイの方、複数いらっしゃるので、
見つけられません。
お声出していただいたら判るんですけど。
それで、取材の方が押し寄せてきた時は、
それまで以上に本当に怖くて、
外に出るのも辛く感じました。
まだ、外から見て、
盲目だったら、
少しは気が楽になるのかもと思ったことがありました。
何しろ、見た目は普通に物が見えているのに、
顔だけ覚えられないということを理解して貰えなくて、
子供の頃からずっと孤独でした。
でも、そんな私を熊野さんは理解してくださって、
毎日忘れても、その度に初めましての気持ちで居れば良いって言ってくれています。
だから、記者の皆さまのことも覚えられなくて失礼なことを申し上げるかもしれませんが、
そもそも、一般人なので、
そっとしておいてくださいと思うばかりなんです…」と、
涙ぐんで言うと、
熊野さんがそっと指先で涙を拭ってくれた。


そんな熊野さんも涙ぐんでいたので、
私は慌ててハンカチで熊野さんの涙を拭って、
にっこり笑った。


2人で立ち上がると、
「そう言うことなんで、
どうか宜しくお願いします」と熊野さんが言って、
2人で深々と頭を下げてから、
手を繋いで会見場を出た。


「私、喋り過ぎちゃった?」と言うと、
「俺よりしっかりしてて、
惚れ直したよ?」と言って、
両頬にキスをしてくれた。



その日はホテルでそのまま一泊してのんびり過ごすことになっていた。
メイク室でお化粧を落として貰って、
ゆったりしたワンピースに着替えてから、
熊野さんの待っているカフェに向かった。

エレベーターの前で、
「あの…さっきは…」と、
声を掛けられる。


「えっと…神田さん?」と顔よりネクタイの辺りを見ながら言うと、
「そうです」と頭を掻きながら近付いてきた。
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