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ノーサイドなんて知らない
第9章 それぞれの想い
お兄様と同じくらい長身でキリリとした風情のお義姉様の前に座ると、緊張してしまう。

不思議な空気感のせいもあるのかもしれない。

落ち着いた低めの声だけど、
無口で殆ど話もしない。

お兄様もどちらかと言うと無口なので、
もっぱらお母様が話をしている感じだった。


隣の部屋から、健(たける)さんの泣き声が聴こえて、
すぐに私が立ち上がると、
お義姉様も「一緒に行っても良いかしら?」と立ち上がる。

並ぶと20センチ以上、私より背が高くて、
羨ましく感じてしまう。


襖を開けると、
ベビーベッドの中で目をパチクリして泣いている。

「健(たける)さん、お腹、空いたのかしら?」と言いながら抱き上げると、
すぐに泣き止んで、私の胸の辺りを弄る。


部屋の片隅に置いてあるソファに座って、
「お義姉様もお座りくださいね?」と言う。

ラップスタイルの合わせを緩めて、
授乳用のブラから胸を出す。

清拭用の脱脂綿で乳首を拭ってから、
乳首を口に含ませると、
ガシっとすっぽりと胸を含んで、
力強くおっぱいを飲み始めた。


お義姉様は、暫くじっとその様子を見ている。


もう片方の乳房を健さんの小さな手が掴むと、
ジワリとおっぱいがブラに馴染んでしまう。


飲んでいるうちに満足してきて、
そのまま眠ってしまった。

縦に抱っこをして軽く背中を叩いてあげると、
軽くゲップをして、また静かに眠る。



お義姉様が、
「抱っこしても、大丈夫?」と訊くので、
「勿論です」と言って、
そっと手渡すようにお義姉様の腕に渡した。


恐々した様子で慎重に抱っこすると、
「患者さんは大人ばかりで、
こんな小さな赤ちゃん、触ることないから…」と、
恥ずかしそうに笑った。


胸を拭いてからブラと服を整えて、
静かに2人を見ていた。


「あら!
健(たける)さん、笑ってる!」とお義姉様が嬉しそうに言う。


「口元が少し上に上がるのが、
『笑ってる』ってことなんですよね?
私、顔の表情とかもあんまり判らなくて…。
こんなんで、育児出来るのかな?」と口にすると、
ポロリと涙が出てしまった。
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