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ノーサイドなんて知らない
第9章 それぞれの想い
健(たける)さんを抱っこした私とお義姉様が一緒にリビングに戻ると、
熊野さんは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔でお義姉様を見て、
私の顔も見た。


「びっくりした!」と言う熊野さんに、
私が「えっ?」と言うと、
「えっ?
茉莉(めあり)、知ってたの?」と訊くので、
「今、伺いましたけど…」と答える。

「びっくりしないの?」

「どうして?」

「どうしてって…だってさ」

「お顔は認識出来ないけど、
美男美女カップルだと思うだけで…」と言うと、
周りがドッと笑う。


「それでね、9月に2人で渡米するから、
その後、薫たちは僕たちの代わりに隣に住むと良いよ。
それなら、育児サポートも万全で安心でしょう?」と、
薫さんのお兄様が静かな声で言う。


「だったら、提案があります」と、私が少し大きな声で言うので、
みんなが一斉に私を見る。


「渡米前に、お兄様たちの結婚式、しませんか?
家族だけで。その頃なら、健(たける)さんも6ヶ月でしっかりしてきてるし。
お義姉様、スタイル良いからドレスお似合いになるし、
記念になるから」

「あら!
良いわね。
流石に薫さん達が式を挙げたカトリック教会は難しいでしょうけど、
どこか…軽井沢とかの教会はどうかしら?
空き状況、薫さん、検索してみて?
別に仏滅とかでも良いわよね?」


「やだ。
なんか、恥ずかしい」と、
お義姉様が少し複雑な顔をするけど、
「お義姉様、お願い!
絶対に素敵だと思うから!」と言うと、
ふんわりとハグして、
「ありがとう」と言ってくれた。




お兄様たちが渡米するまでの2ヶ月半ほどは、
これまでと違ってお互いの家を行き来するようになった。


健(たける)さんは、
お義姉様のことが大好きみたいで、
よく抱っこをしてもらうようになった。


熊野さんはお兄様に、
「ねえねえ、
セックスとか、するんだよな?」と失礼なことを平気で訊いて、
私が、
「そんなこと!」と紅い顔で怒ると、
「え?
良いじゃん。
俺たちも愛し合ってる訳だし」と言うので、
私は黙り込んでしまう。


それを見て、
お義姉様が少し心配そんな顔をされてることもあったりした。
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