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芦屋洋館秘話 ハウスメイドの献身ご奉仕
第2章 ハウスメイド 涼子

夏の青山家洋館の昼下がりは、酷暑の中でも、浜風が木々の間を抜けて吹き上がり、清涼感をかもし出す。涼子は、朝遅くにご主人様の寝室を出た後、有香と一緒にご主人様のブランチのお世話をして、出社のお見送りをしてから、自室でサンドイッチとアイスティーの簡素な昼食をとって休んでいた。
お見送りの後で有香に、今朝着替えをそっと届けてくれたことや、昨夜ご主人様のお呼びを待ってもらったことに礼を言ったが、有香は 「私が涼子さんに助けてもらうことのほうが、ずっとずっと多いんですからぁー」と大きな明るい声を響かせ、セミロングのストレートヘアーをまとめたポニーテールを揺らして、屈託なく笑った。
有香は、涼子と一緒にご主人様にお仕えしているが、愛育院では慶一と同い歳で一緒に育っており、涼子は毎年のクリスマス会やバザーの手伝いで、幼児のころからその顔を見ていた。また、両親を知らないことや、高校を卒業してすぐに青山家にハウスメイドとして入ったことなど、自分の境遇とも重なるため、親心にも似た親近感をもち、この洋館に来た頃は、丁寧に家事を教えながら、寝室でのご奉仕も何かと蔭で支えた。有香も、涼子が愛育院まで迎えにいったあの日からずっと、先輩として慕ってくれている様子だった。
今、涼子の目に、さっきの有香の笑顔が、回りながら飛び込んで来るような感覚にとらわれた。夏の午後のけだるい空気と、朝の寝室でのご奉仕の心地よい疲れとで、半ば眠りながら夢のように、しかし微かな意識を持って、この洋館での出来事が次々と頭の中を巡った。

