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芦屋洋館秘話 ハウスメイドの献身ご奉仕
第2章  ハウスメイド 涼子

 (回想シーン3)
 ・・・高校の卒業式には百合子さんが親代わりに参列してくれた。その日のうちに、百合子さんに付き添われ、わずかの普段着と熊のぬいぐるみだけを持ち、この洋館にあてがわれた質素な自室に入ったのだった。セーラー服やほとんどの衣服も、文房具も、愛育院にお下がりとして置いて来た。見回すと、部屋にはベッドとわずかの家具が置かれ、奥に小さな洗面・シャワースペースと、ドア横にインターフォンが付いていた。
 
 ベッドに揃えて置かれた白いシャツと黒のミニスカートが目に入った瞬間、私は覚悟を決めていただけに、その夜からこれを着て、ご主人様の寝室でご奉仕が始まるとばかり思い込み、しかし愛育院で支給されていた安物の下着のままでは恥ずかしいのでどうしようかなどと、とっさに考えてしまったのだ。

 その時、百合子さんが優しく話しかけてくれた。 「しばらくは私のもとで家事のお手伝いをしてもらって、ここでの暮らしに慣れて下さいね。涼子さんがお仕えする陽一様とは、日常のなかで少しずつ打ち解けていけばいいのよ。寝室でのご奉仕にあがるのは、あなたが陽一様と自然に接することができるようになってからでいいと、陽一様もそう仰っていますから。」

 ・・・翌日、百合子さんに連れられて朝食の給仕に立ったのだった。朝食とはいえ、秘書さんを交えてお仕事の打ち合わせが始まっていたので、百合子さんは私を手短に紹介してくれた。先代のご当主は目を細めて、 「よく来てくれたねえ」 と、陽一様も微笑みながら 「あせらず徐々に慣れてくれればいいからね」 と、優しい声をかけて下さった。丸顔の秘書さんのニコニコした表情を見て更に安心したことも、はっきりと覚えている。
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