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芦屋洋館秘話 ハウスメイドの献身ご奉仕
第4章  当主後継者 慶一

 慶一は、部屋を出て階段を下りると、振り返って、後ろに控えながら付いてきた有香に声を掛けた。

「今日の夕食会、お世話様でしたね。疲れているだろうけど、もう少し部屋でお話ししませんか。」

「有り難う存じます。ご主人様。何かお飲み物をお持ちしましょうか。」

「そうですね。もし、ジャスミン茶が有るようならお願いします。シンガポールで覚えたんだけど、リラックス効果があって、寝る前にいいんですよ。」

「はい、ございます。中国系のお客様も多ございますので。すぐご用意してお部屋に参ります。」

                 ☆

 有香が慶一の寝室に入ると、慶一は上着を脱ぎ、鈍い茶色の皮製ソファーに、目を閉じてもたれかかり、足を投げ出していた。有香は、サイドテーブルの脇で膝をつき、大きな中国湯呑みとポットが載ったトレイを置いた。湯呑みの蓋を取ると、上品なジャスミンの香りが漂った。有香は慶一の方に向き直ると、いたわるような口調で声を掛けた。

「ご主人様どうぞ。お疲れのご様子ですが、お着替えやご入浴はいかがされますか。ご主人様の日常のお好みをまだよく存じ上げないもので、いちいちお伺いしてすみません。何でもお気兼ねなくお申し付け下さい。」
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