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芦屋洋館秘話 ハウスメイドの献身ご奉仕
第5章  ハウスメイド 志保
 
「嬉しいです。私の言ったことを、そういう風に真正面から受け止めてお話ししてくれるのが、慶一さんの素敵なところです。本当に、<私は私の役目を果たす>ということですよね。そう考えると、有香さんのように、<ご主人様>と自然な感じで口に出て来るんですね。」  志保は、にわかに明るい表情に変わって、続けて言った。

「このあと食堂で<慶一さん>などと呼ばないように、練習しますね。ご主人様、ご主人様、ご主人様・・・。ご主人様、それではお着替えをどうぞ。さっき有香さんから、夕食の時はこの服装でと教えてもらったんです。クローゼットから取ってきますね。あ、いえ、取って参ります。」

ちょうど着替えが終わった頃に、有香がドアをノックし、夕食の準備が出来たことを告げた。

                 ☆

 夕食は、和やかな空気に包まれた。有香に付いて給仕に立った志保は、陽一の前で深々とお辞儀して挨拶した。陽一は 「この前、向こうでお話しした時にね、志保さんが、<学んだ英語を活かしたいと思い、シンガポールの教会に自分でレターを出した>と聞いてね、聡明で積極的なお嬢さんだと感心したんだ。きっといいハウスメイドさんになるよ。」 と、にこやかに言った。慶一も、それを聞いて、嬉しそうに頷いた。
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