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芦屋洋館秘話 ハウスメイドの献身ご奉仕
第5章 ハウスメイド 志保

翌朝、有香は、志保に食堂で給仕の仕度を始めるように言い、自分は慶一の身仕度のため寝室に入った。その時、慶一から、 「有香さん、昨日、志保さんに取り敢えずの身の回りのものをプレゼントしてくれたみたいで、有り難う。それでね、お願いがあるんだけど、これで一通りのものを揃えてやって欲しいんだ。シンガポールは物価も高いし、孤児院の給金も微々たるものでね。質素な生活をしていたから。」 と、クレジットカードを渡された。
「かしこまりました。今日明日はご主人様はご出張ですので、その間に二人で出かけてきます。」
「そうして下さい。下着は、有香さんほどセクシーでなくてもいいかな。」 と、慶一は笑った。
その日の午後、有香は志保を連れて、急なライト坂を下り、阪急芦屋川駅から三宮に出た。3月のまだ少し肌寒い日に着るような普段着を何着かと、サーモンピンクのスニーカーを、二人で選んで買った。それから、コスメ店でベーシックなスキンケアクリームやリップを揃えていると、志保がヘアバンドをいくつか手に取っているのを見て、有香は思わず微笑みながら、「ボブの子は、タオル地の幅広が実用的よ。」と声をかけた。振り返った志保は、<昨日の夜、何があったか有香さんお見通しなんだ>と、頬を赤らめた。最後に、ランジェリー店で、白、ベージュ系の清楚な下着を数セット買い足した。それから、トーアロードの坂を上り、瀟洒なホテルのラウンジで遅めのティータイムを過ごした。
「有香さん、こんなにしてもらって、私、いいんでしょうか。」
「昨日、<青山家の皆さんが、ハウスメイドをとても大事にしてくれるのは、本当のことよ>と言ったでしょう。その意味はね、いつもこういう気遣いをして下さるということなの。気遣いと言ってもね、お給料とか、今日のように何か買っていただくとか、お金や物のことを言っているのではないのよ。ハウスメイド一人一人の生活や、将来のこと、生んで外に預けた子供のことも含めてね、普段からしっかりと様子を見て、丁寧に考えて、支えて下さるの。そういう有り難い気持ちのことを言ってるの。」
「はい、良く分かりました。まだ2日目ですけど、慶一さんや有香さんをはじめ、回りの皆さんの優しいお気持ちが見えてきた気がします。私、何とかやっていけそうかな。」
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