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芦屋洋館秘話 ハウスメイドの献身ご奉仕
第1章  当主 陽一 ~ 青山家の秘密
「女中を寝所に入れ、子ができると別宅をあてがうような昔のやり方は無理になって、<4代前のご当主様が、住込み家政婦に産ませた子を、青山家も支援する神戸聖母愛育院に預けて、蔭で見守りながら養育したのが始まりで、今までそのやり方が続いている>と、1歳であの子を手離す時に伺いました。母としてはつらい思いもありましたが、青山家の皆様が温かくあの子のことを見守って下さったので、それが心の支えでした。」 涼子は更に言葉を続けた。

「それに、愛育院育ちの孤児を、社員や使用人として受け入れて下さっているのも有り難いことです。私も両親を知らずに育ちましたが、高校を卒業して施設を出る時に、青山家からお声がかかり、こうしてご主人様のお世話をさせていただいて、幸せです。」

「涼子さんの青山家への奉仕の思いには、いつも頭が下がりますよ。近々、慶一君をこちらに呼び戻す時には、戸籍上も僕の実子として認知して、当主を継ぐ立場になることを、本人に自覚してもらおうと思っていてね。その時に、あなたが実母だということも話すから、もう少しの辛抱だ。」

 陽一は、いつの間にかすすり泣いている涼子を、愛おしむように引き寄せ、再び長いキスを交わした。 ・・・「僕自身も愛育院で育って、施設を出た後は、青山家の奨学金で大学に行かせてもらい、会社にも入れてもらえたんだけど、自分が青山家と特別な関わりがあるとはつゆ知らず、ずっと孤児だと思っていたんだ。・・・それが、30歳を前に突然先代に呼ばれて、<真面目によく仕事をしている。お前に当家を継がせて社長にする>と言われた、その時だよ。先代が実父で、そのお世話をしているハウスメイドの百合子さんが実母だと知らされたのは。・・・同じ時に、先代は、僕の次の代の後継ぎを生んでくれるハウスメイドとして、あなたを探し出してくれた。」
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