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私じゃなくても
第2章 溢れる涙
「奥村さんやないですか!」

「あ、早瀬さん。
おかえりなさい」

「ただいまやけど
どないしたんですか?」

「千華の夜泣きがひどくて…
でも
ここに来ると落ち着くんです」

夜泣きか……
昨日の夜
静かや思うてたけど
もしかして
昨日の夜もココにおったんやろうか。
せやからワンちゃん
疲れた顔してるんかも……

「隣、座ってもいいですか?」

「あ、はい」

歩き疲れた俺は
ワンちゃんの隣に座って
千華ちゃんに話しかけてみた。

「赤ちゃんは寝るのが仕事や
思うてたけど
寝たないときもあんねんなぁ。
せやけど
夜は寝んと
ママ大変やで」

そして
千華ちゃんのほっぺに
ツンっと指先で触れると
千華ちゃんがニッコリと微笑んだ。

「うわ!笑ろうてくれたで!」

「クスッ」

するとワンちゃんまで
ニッコリと笑いながら
俺を見上げた。

か、かわいい…
千華ちゃん無茶苦茶可愛いけど
初めて見た
ワンちゃんの笑顔
無茶苦茶可愛らしいやんけ!!
その上、優しそうやし
泣き虫っぽいとこあるけど
よう頑張ってて…

「あの…」

「あ、え?
いや、なんですか?」

あ、焦ったぁ。
あかんあかん
俺はなんちゅうこと考えてんねん!

「少しだけでいいんですけど」

「あ、はい」

「このまま…」

「このまま?」

「少しお話、してもいいですか?」
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