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私じゃなくても
第2章 溢れる涙
「よかったら
もっと食べてな。
俺は腹減ってへんから」
「ありがとうございます」
「クスッ」
なんや
たこ焼き好きなんか?
これに関しては
全く遠慮せんのやな。
「え?」
「いや、遠慮のう
食べてくれるん嬉しいなぁ思うて。
けど食べにくそうで
可愛そうやなぁ」
「世の中のママは
みんなこうしてると思いますよ」
「そうかも知れへんけど…
なんや見てられへん。
やっぱりチャレンジしてみるか」
「何を?」
「嫌やなかったらやけど」
「はい」
「千華ちゃん
俺が抱っこしてみよか?
奥村さんが
嫌やなかったらやけど」
「いいんですか?
私は全然大丈夫です。
むしろ
色んな人に
抱っこしてもらいたいって思ってて」
「ほんま?
けど下手やで?
赤ちゃん抱っこしたんなんか
甥っ子抱いた時で
その時俺、高校生やったし」
「え?高校生ですか?」
「そうやでー」
俺はたこ焼きをベンチに置いて
背筋を伸ばした。
「どないしたらええ?」
「じゃあ…両手で
ゆりかごを作って下さい。
そうしたら
私が千華をそこに寝かせるので。
早瀬さんが
千華のベットになる感じで」
「あーわかりやすい。
よっしゃ!
頑張るで!!」
と、俺がゆりかごを作ると
ワンちゃんはゆっくりと立ち上がり
そして
そーっと俺に近づいて
千華ちゃんを
俺の腕の上に寝かせた。
その時
思いの外
ワンちゃんの顔が俺に接近し
そして
千華ちゃんをバトンタッチする時には
ワンちゃんの柔らかい肌が
俺の腕に触れた。
わ……
なんや久しぶりかも
女の人に触れたん。
「上手です」
「え?あ、あぁ」
そうやそうや
そんなことより
千華ちゃんしっかり見とかな…
その時
ちょうど千華ちゃんは居眠りしてて
心配してたよりも
案外簡単に
俺は千華ちゃんを
抱くことができたんやけど
なんや……
俺の胸が
ざわざわする。
どないしたんやろ、俺。