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私じゃなくても
第3章 友達のライン
「大丈夫?」
「え?」
「奥村さんより
奥村さんの方が
あ、いや、奥さんの方が
具合悪なんで」
正直、自分でもそう思ってる。
手伝いをお願いできる身内は近くにいないし
引っ越して来たばかりで
知り合いもいない。
だから
ちょっと…疲れてる。
でも
「でも主人は仕事に行かなきゃいけないから。
私は千華と一緒にお昼寝できますから」
そう、これも本心。
タカくんが元気でなきゃ。
けど何故か悲しくて
すぐ泣きそうになって
もう少し優しくして欲しくて…
でも、それが言えなくて。
「はぁ……」
すると早瀬さんは
そうため息をつきながら
空を見上あげた。
「困ったもんやなぁ」
そう。
どうしようもないの。
仕方ないの。
私だけじゃなくて
世の中のママはみんなそれを
乗り越えてるはず。
「でも頑張らないと。
千華も少しずつ大きくなってるし
ずっとじゃないし」
「そりゃそうやねんけど。
なんや…もどかしいわ」
もどかしい?
何が、もどかしいんだろ。
そう思った
その時
私の携帯が震えはじめた。
急いで携帯を確認すると
それはタカくんからの電話。
「あ、タカくん」
「えっ!!」
早瀬さんは
かなり驚いたみたいで
ちょっと大きな声を出した。
「ちょっと、すみません」
それから私は
早瀬さんに背中を向けて
急いで携帯を耳にあてた。
「あ、うん。
ちょっとぐずったから
うん、うん、ごめんね。
わかった」
喉が乾いて目が覚めたタカくんは
私と千華がいないことに気づいて
電話をかけてきたみたいだった。
「すみませんでした」
「えーよえーよ。
もしかして奥村さん?」
「はい。
目が覚めたみたいで」
「そ、そりゃ
おらんかったら心配するわ」
「なので…」
「あ、うん」
もう少し
話していたかったけど。
「そろそろ…」
「そ、そーやな」
早く帰らないと…
そう思ってるのに
私は腰を上げることができなくて
黙ったままでいると
おしゃべりな早瀬さんまで
黙ったまま。
見ると
千華は早瀬さんの腕の中で
気持ちよさそうに寝ていて…
また
泣きそうになってしまった。
ここで早瀬さんと話をするの
楽しみにしていたんだけど
これからはちょっと
躊躇っちゃうなって
思って。