この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
私じゃなくても
第3章 友達のライン
躊躇う理由。
それはやっぱり
タカくんに
変な疑いをかけられたくないから。
それに
早瀬さんにだって
迷惑をかけたくない。
あぁ…
深夜に男の人と会ってるなんて
それだけで
ダメなのかもしれないのに
私、早瀬さんと話したくて、つい。
でももう
帰らないと。
タカくんから
また電話がかかってきたりする前に。
「早瀬さん」
「ん?」
「千華を
ありがとうございました」
「あ、いや、全然。
奥村さん心配するしな。
もう。帰らんと」
「はい」
そう返事をして
私が千華を抱こうとすると
早瀬さんは
ぎこちなくも、優しく
千華を私に抱かせてくれた。
本当に優しい人。
あなたと結婚する人は
どんなに幸せだろう。
「もう、帰りますね」
「あ、うん、おやすみ。
俺は…もうちょっとだけココに」
「あ、はい。
じゃあ…」
「じゃあ」
それから私は
早瀬さんに背中を向けて歩き出したんだけど
早瀬さんの顔が見えなくなっただけで
涙が込み上げていた。
なんだか
もう二度と
こうして早瀬さんと深夜に会うことも
千華を抱いてもらうことも
話を聞いてもらうことも
してはいけないことのような気がして。
友達としてでも
いけないことなのかな…
私が
どんなに辛くても
どんなに寂しくても
ただ話をするだけでも
ダメなのかな…