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第5章 エルシェ

私は自分の部屋に戻ると、窓辺に座った。

きっとこの話は、上手くまとまるだろう。

そうすれば、この窓辺から見る景色も、あと何回見る事ができるか、分からない。

ああ、私は一度も顔を見た事の無い人を、夫にするのか。

私はハッとした。

「そうよ。父上に頼んで、一度だけでもお顔を見せて頂くのよ。それだったら、覚悟を決められるわ。」


私は早速部屋を出て、父上にその事を伝えた。

「まあ、一目見る事はできるだろうが。本当にそんなんで、覚悟ができるのか？」

「任せて下さい。」

私はこの時、嘘をついていた。

もし一目会って、嫌な奴だったら、徹底的に断ろうと思っていた。

「本当に、一目だけだぞ。」

父上はそう言うと、仕事に私を連れて行ってくれた。