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奸計〜罠に堕ちた女達〜
第42章 脅迫
見慣れた商品が並ぶ棚の間から、娘の優子を映し出している。優子はリップを手に取ると、素早くカバンに入れる。ずいぶんと慣れた手つきで。2個一気に手に取り、1個をカバンに滑り落とし、1個を何食わぬ顔で棚に戻す。

もう常習を確信させる手つき。その様子に光江は衝撃を受ける。

「ゆ…優子…。な…なんで…こんな…。う…嘘でしょ…?」

「親が親なら…子も子だ…。これは初めての犯行ではないでしょうね〜。まぁ、親がダブル不倫して、ましてや、父親は自分と同じ高校生に手を出してりゃ…子どもが非行に走るのも仕方ないですけどね〜。」

「あ…あなたに…何が…わかるのよっ…!」

「さぁ…何もわからないかもしれませんが…。大事なのは…結果というか…娘さんが万引きして、それを俺が知ってるってだけですからね〜。」

「い…いったい…何が望みっ…!?そ、その…データ…消してくれるんでしょうねっ…!?」

光江はブルブル震えながら、狩野を睨む。しかし、以前のように怯んだり、唯々諾々と従う狩野ではない。

「消すかどうかはそっちの出方次第ですよ?ああ…先に言っておくと、この携帯を奪うだけじゃ駄目ですよ?データはパソコンにも移してますし…。いつだって世間に公開出来る準備は整ってますんで。」

「そんなの駄目よっ!ふ…ふざけないでっ…!」

「ふざけてんのはどっちだ?立場を使って人を奴隷のように扱いやがって…。俺がこのデータを週刊誌にでも売ったら、お前も、家族も終わりになるぞ?一流企業の最低家族。ダブル不倫に横領に不純性行為に万引き。いい恥さらしだよな…?」

「や…やめて…。お願いっ…。それは…。駄目…。」

狩野の脅しにトーンダウンし、声も小さくなる光江。そんな光江に狩野はどんどん強気になる。

「お願いするんなら、それなりの仕方ってもんがあるだろ?課長さん…?それでも営業課長なのか?おいっ?」

いつにない狩野の荒々しい言葉に屈辱を感じつつも、今の光江にはどうすることも出来ない。どうすればデータを消すか譲ってもらえるかを、必死で考える。

「ひゃ…百万…。百万出すわ…。それでデータを全部譲ってちょうだい?百万なら週刊誌なんかより…よっぽどお金になるでしょ…?ねっ…?」

光江がこれならどうだと言わんばかりに提案してくるが、狩野はそれを鼻で笑い飛ばす。

「はっ…?おいおい…。百万ぽっちかぁ…?」
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