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奸計〜罠に堕ちた女達〜
第42章 脅迫
嘲るように狩野は言う。データの価値を理解していない光江に呆れたように言う。

「お前自身だけじゃない…。家族もろとも破滅に追いやれるんだぞ…?百万じゃ…全く足りないな〜。そうだな…。5億…。5億出したら、この携帯のデータも、パソコンのデータも全て譲ってヤるよ?」

「ご…5億っ…!?む…無理に決まってるじゃないっ!?ふ…ふざけるのもいい加減にしてっ!」

きつく光江が睨んでくるが、狩野にとって快感にしかならない。

「いい加減にしてって言うけど、いい加減にしてほしいのは、こっちなんだよ?データを公表されて困るのはそっち。俺は何にも困らない。あんたの父親が横領した金のこと考えりゃ、5億だって高すぎはしない。どうするよ?」

狩野が完全に本気であることを悟った光江は顔を真っ青にする。

『旦那がどうなってもいいけど…娘は…直子は…駄目…。それに父が捕まれば…私も…娘も…。』

幼少期に親に構ってもらえなかった光江は、直子だけは大切にしていた。高校生になるまでは、直子との時間も出来るだけ作るようにしていた。おかげで母娘は姉妹のように仲が良い。

不倫だって、直子が高校生になり、友達との時間が増えてきたから、始めたくらいなのだ。だから光江は何としても直子だけは守りたい。

唇を噛み締め、光江は俯く。内心で湧き上がる怒りを必死に抑え、言葉を絞り出す。

「お…お願い…します。ご…5億は…無理です…。で…出来るだけ…お金は…ご…五百万くらいなら…用意します。だから…それで…データを譲ってください…。お願いします…。」

今まで見下してきた男に頭を下げる嫌悪感と恥辱。それらに身体を震わせながら、光江は頭を下げる。しかし、返ってきた返事は冷たいものだった。

「だめだね。一円もまけてなんかやらねぇ〜よ。」

「なっ!?あ…あんたね…。こっちが…必死に頭下げてるのに…。」

「おいおい…課長さん…。俺があんたに無茶振りされた仕事で、何度頭を下げさせられたと思ってんだ?そして、あんたはその時、なんて言ってた?」

【頭下げたって価値はないのっ!ほしいのは結果!】

常々、光江が狩野に対し、怒鳴ってきた言葉。その言葉が光江自身に跳ね返ってくる。

「下げた頭に価値はねえんだよ?ほしいのは結果。金を払うか、お前の破滅する姿を見て笑うか…。俺がほしいのはどっちかだ…。」

「そ…そんな…。」
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